車好きの人々の心を掴んだ名車「トヨタ86」と「GRスープラ」。これらのスポーツカーを手掛けたキーパーソンが、多田哲哉さんです。彼はトヨタで長年車作りに携わり、「運転の楽しさ」にこだわった車を生み出してきました。この記事では、多田哲哉さんの挑戦の軌跡と、その魅力をお伝えします。
多田哲哉、その人間味あふれる開発哲学
多田哲哉さんは、トヨタで数々のヒット車種を手掛けたエンジニアであり、特にトヨタ86やスープラの開発リーダーとして知られています。彼のエピソードを紐解くと、車を単なる移動手段ではなく「人々の生活を豊かにする存在」として捉える哲学が見えてきます。
開発現場では、多田哲哉さんは「スペック競争」ではなく「運転する楽しさ」を追求しました。その象徴がトヨタ86。開発の初期、多田さんは「この車は速さで勝負しない」と明言し、軽量化やハンドリング性能を重視しました。チーム内からは疑問の声も上がりましたが、多田哲哉さんは「ドライバーが笑顔になる瞬間を作ることが最優先」とチームを鼓舞しました。
多田哲哉さん登場✨
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評論家やジャーナリストとの違いとは?
多田哲哉さんと自動車ジャーナリストや評論家との違いは、主に「実務経験」と「視点の違い」にあります。以下のポイントで比較してみましょう。
1. 実務経験の深さ
多田哲哉さんは、トヨタのエンジニアとして長年働き、86やスープラといった象徴的な車の開発を直接手掛けた人物です。そのため、彼の意見やコメントは、開発現場のリアルな経験に基づいており、「車がどう作られ、どのように運転者に影響を与えるか」を深く理解しています。
一方、ジャーナリストや評論家は主に車を購入者や消費者の視点で評価します。彼らは車の試乗レビューや市場分析を通じて情報を提供しますが、車の内部構造や開発過程の詳細については、エンジニアほどの深さを持たない場合が多いです。
2. 視点の違い
多田哲哉さんは「車を通じて人々の生活を豊かにする」という哲学を持っています。たとえば、彼は86開発時に「運転の楽しさを伝えたい」というテーマを掲げ、あえてスペック重視ではなく、フィーリング重視の車作りを選びました。
一方で、ジャーナリストや評論家は、車を「市場や競合の中でどう位置づけられるか」という視点で見ることが多いです。例えば、同じ86でも「価格帯での競争力」や「スペック比較」といった観点から語られることが多いです。
3. 影響力の種類
多田哲哉さんの影響力は「車そのもの」を通じて発揮されます。彼が手掛けた車は、それ自体が彼のビジョンを体現しています。車好きの間では、86やスープラが「多田さんの作品」として語られることがあり、これが彼の影響力を象徴しています。
ジャーナリストや評論家の場合、影響力は「言葉」を通じて発揮されます。彼らのレビューやコラムが消費者の購買判断に直接影響を与えることも少なくありません。
4. 技術と感性の融合
多田哲哉さんは、工学的な知識と運転感覚の融合を大切にしています。例えば、スープラの開発ではBMWとのコラボレーションを活かしつつも、「スープラらしさ」を守るための微調整を徹底しました。このように、技術と感性を両立させるアプローチは、評論家とは異なるエンジニア独自の視点です。
ジャーナリストは一般的に試乗や市場評価に基づいて車を批評しますが、その裏側にある技術的な判断や制約については触れないことが多いです。
BMW担当者との激論
スープラの開発時、多田哲哉さんはBMWのエンジニアと「味付け」に関する激しい議論を交わしました。ある日、多田哲哉さんが「スープラは、もっと日本らしいシャープな感覚が必要だ」と意見を述べると、BMW側から「これはドイツ車だ。シャープさよりも安定性が重要だ」と反論されました。
その場は一触即発の雰囲気に。しかし、最終的にお互いの意見を尊重し、細部のセッティングを徹底的に調整することで「スープラらしさ」を守りつつも、BMWらしい精密さを活かした車が完成しました。この過程で、言葉の壁を超えて心から信頼できるパートナーシップが生まれたそうです。
おぎやはぎが「それであの出来栄えなら、むしろ喧嘩して正解!」と突っ込む場面もありました。
【デトロイトショー 2019】新型「スープラ」のチーフエンジニア 多田哲哉氏に聞く https://t.co/3xgP0jOC8G #NAIAS #NAIAS2019 #supra pic.twitter.com/Uv05GTKDxe
— Car Watch (@car_watch) January 21, 2019
ライバルメーカー担当者との交流
マツダのロードスター開発責任者である貴島孝雄さんとは、スポーツカーの哲学や方向性について意見を交わしています。貴島さんは「景気の波でスポーツカーを作ったりやめたりするのは、ファンを裏切る行為だ」と語り、その思想は多田哲哉さんにも強い影響を与え、86開発中に「スポーツカーは愛されるべきものであり、絶対に作り続けるべきだ」との信念を持つようになりました。
なかなか他のメーカーの担当者に会いに行くなんてことはできないですよね。こういうところも多田哲哉さんの魅力にひとつですね。
まとめ
エンジニアというと取っ付きにくいイメージがありますが、多田哲哉さんは違います。ナチュラル感のある風貌で威圧感はゼロ、その上よくしゃべります。本当にエンジニアと疑ってしまいそう、加えて話が面白く的確な受け答えもできてしまいます。
多田哲哉さんは「車を作る人」であり、その発言は現場のリアルな知識に裏打ちされています。一方、ジャーナリストや評論家は「車を評価する人」として、消費者目線での情報提供を得意としています。この二者の違いは、どちらが優れているというよりも、「役割の違い」に基づいて補完し合う関係と言えます。しかし、車を作る人が車を評価するのが多田哲哉さんなのです。