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いてまえ打線の伝説 近鉄バファローズが見せた最強攻撃野球

「いてまえ打線」とは、1979年から2004年にかけて近鉄バファローズを象徴した強力打線の愛称です。
「いてまえ」とは大阪弁で「打ちまくれ!」を意味し、その言葉通り、攻撃を惜しまないスタイルでプロ野球界を席巻しました。

この記事では、当時の「いてまえ文化」の背景や伝説的な打線の魅力、さらには現代における「いてまえ打線の再来」への期待まで掘り下げてお伝えします!

1. いてまえ文化――大阪が生んだ猛攻スタイル

「いてまえ」の精神は野球だけじゃない!

大阪の街には昔から「やったれ」「儲けたれ」という前向きな気質が根付いています。
特に1980年代は大阪経済が力強く、商売人の精神やお笑い文化が「攻める姿勢」に通じていました。

近鉄バファローズの「いてまえ打線」は、まさにその時代背景と大阪気質が反映されたもの。

  • ホームラン1発で試合を決める豪快なスタイル
  • 細かいことより勢い重視――まさに大阪流の「勝負師魂」

藤井寺球場での声援や、ファンが叫ぶ「いてまえ!」という熱狂的な応援は、他球団にはない独自の文化でした。

2. いてまえ打線の主役たち――猛打爆発の男たち

「いてまえ打線」として最強打線を築いた近鉄バファローズはどんな球団なのでしょうか。

近鉄バファローズ

球団の歴史
  • 創設: 1949年に近畿日本鉄道(近鉄)を親会社として設立
  • 初期愛称: 近鉄パールス(真珠の意味)
  • 改称: 1959年に近鉄バファロー、1962年に近鉄バファローズに改称
  • 最終名称: 大阪近鉄バファローズ(1999年〜2004年)
球団の特徴
  • パシフィック・リーグに所属
  • 日本一を経験したことのない唯一の長期存続球団
  • 2001年に「いてまえ打線」でリーグ優勝を果たす
  • 2004年にオリックス・ブルーウェーブと合併し消滅

代表的な選手たち

  • ラルフ・ブライアント:圧倒的パワーで量産するホームラン王。 (1988 - 1995)
  • 石井浩郎:勝負強い打撃で得点を量産。 (1990 - 1996)
  • 大石大二郎:俊足とリードオフマンとしての役割。(1981 - 1997)
  • 金村義明:豪快な打撃で中軸を支える存在。(1982 - 1994)
  • タフィ・ローズ:パ・リーグのシーズン本塁打数最多記録(55本)。 (1996 - 2003)
  • 中村紀洋:バットを高く放り投げるスタイルで観客を魅了。(1992 - 2004)

打線に切れ目がなく、1番から9番まで「全員が主役」のスタイルはまさに「いてまえ精神」の象徴でした。個性的な選手をまとめ上げた監督として西本幸雄さん仰木彬さんが挙げられます。

3.いてまえ打線の爆発力

近鉄いてまえ打線のすごさは、その圧倒的な打撃力と得点力にあります。

いてまえ打線の特徴

  1. 長打力:クリーンナップの強力な長打力を重視し、チーム本塁打数200本以上を3度記録しました。
  2. バランスの取れた編成:1番には俊足選手、2番には巧打の選手を配置し、クリーンナップ以外の打者も効果的に本塁打を放ちました。
  3. 逆転の多さ:2001年シーズンでは78勝中41試合が逆転勝ちという驚異的な記録を残しました。
  4. 個人成績の突出:2001年には、タフィ・ローズが55本塁打、中村紀洋が46本塁打132打点を記録する等、個人成績も素晴らしいものでした。
  5. チーム防御率最下位でのリーグ制覇:2001年、打撃力だけでチームをリーグ優勝に導きました。

いてまえ打線は、時代によって多少特徴が変わりましたが、一貫して打高投低の打ち勝つ野球を展開し、ファンを魅了し続けました。

1989年の「ブライアント4打席連続ホームラン」

近鉄を代表する試合のひとつが、ブライアントさんの「4打席連続ホームラン」です。

  • ホームランの連発で、まさに「いてまえ」を体現。
  • 優勝を争う西武球場でのダブルヘッダー、前日は眠れなかったと本人談。

2001年の「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」

優勝を決める試合で飛び出した、北川博敏さんの劇的な一撃。しかしこれが近鉄バファローズ最後のリーグ優勝となりました。

4. いてまえ打線は現代に蘇るか?

いてまえ打線が現代に完全に甦ることは難しいですが、その精神や一部の要素は現代野球にも影響を与えています。現代野球において、いてまえ打線のような攻撃的な打線を再現することには以下の課題があります:

  1. 投手力の向上:現代の投手はより高度な技術を持ち、打者を抑えることに長けています。
  2. データ分析の発達:守備シフトなどの戦略により、打者の長所を封じることが容易になっています。
  3. 球場の変化:多くの球場が投手有利に設計されており、本塁打を量産することが難しくなっています。

また、オリックス・バファローズが2021年に行った"Legend of Bs〜蘇る黄金の70's〜"のようなイベントを通じて、いてまえ打線の精神を継承しようとする動きもあります。結論として、完全な形での復活は難しいものの、いてまえ打線の精神や一部の要素は現代野球にも息づいており、ファンの記憶に残る伝説的な打線として語り継がれています。

5. ファンの声――もう一度、あの打線を見たい!

近鉄バファローズが消滅して20年以上が経ちますが、今なおファンの間では「いてまえ打線」を求める声があり、現代のプロ野球ファンの間でも根強く存在しています。その理由には以下のようなものがあります。

個性的な選手の活躍:タフィ・ローズや中村紀洋のような個性的で強力な打者の活躍が、ファンの記憶に強く残っています

打撃力への渇望:多くのチームが投手力重視の傾向にある中、ファンは爆発的な打撃力を持つ打線を懐かしんでいます。

エンターテインメント性:いてまえ打線の豪快な打撃は、観客を魅了する高いエンターテインメント性を持っていました。

地域性の表現:「いてまえ」という大阪弁を用いたネーミングは、地域性を表現する独特の魅力がありました1

逆転の多さ:いてまえ打線は逆転勝ちを多く記録し、試合終了まで目が離せない展開を作り出していました。

まとめ:いてまえ打線の精神は永遠に

アメリカ大統領が「一番おもしろいゲームスコアは、8対7だ」といった打ち勝つ野球、これを体現したのが「いてまえ打線」です。

近鉄バファローズの「いてまえ打線」は、単なる強力打線ではなく、大阪文化が生んだ象徴的なスタイルでした。
現代野球では投手力が重視されていますが、もう一度あの「いてまえ精神」が甦れば、野球界全体が盛り上がることでしょう。

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